■舞台「Defiled -ディファイルド-(6)」DDD青山クロスシアター 13:00開演(上演時間:1時間40分)。F列下手で観劇。
作:LEE KALCHEIM、翻訳:小田島恒志、演出:鈴木勝秀
出演:勝村政信(ブライアン・ディッキー)、戸塚祥太(ハリー・メンデルソン)
声の出演:中村まこと(署長)、佐藤真弓(メリンダ)

 
待ちに待った祥太の二人芝居。会場は青山劇場の横道に入ったところにある小さな舞台。雨の降る中、行って参りました。私的初日終了。おもしろかった…。祥太も勝村さんも良かった…。
ちゃんとまとめて整理するのは追って。とりあえず、記憶にあることを最初の印象だけ書き出しておく(後日推敲して追記してちょこちょこ整えます←予定は未定)。

会場暗転。場内に流れる「Ave Maria」。
照明がつくと両手にダイナマイトを抱えてステージ上に現れるハリー。図書館の本棚にひとつひとつセットしていく。淡々と何かの儀式のように行われるこの演出、ずずーんときた。
たかおちゃんの再演をご覧になった方が感想(※こちら参照)で、ハリーを「動きがねこみたい。態度はいぬみたい」と表現されてましたが、祥太のハリーもそうだったかも。動きは猫の様にしなやかで、噛みつくように吠えてる時は犬のようだった。
本棚に爆弾を置く際、背中を見せるので、後頭部が目に入るのだけど、その後ろ髪が直前まで帽子かぶってましたよね?ってな感じに外側に癖がついているのが判る。
目録カードの棚に登る時に履いている靴を脱ぐ。棚から降りるとその靴を片手で履く。ここの流れがそして手の動きも含めてスムーズでなんか見惚れた。
そして音楽が素敵。音楽担当の大嶋さんがピアニストに「どれだけ切ない芝居なのか」を説明しながら録られたと書かれてましたが、その切ない始まりを予感させる音楽。この「Ave Maria」欲しい。

ひとしきりダイナマイトを棚に設置し終えると、ヘリとサイレンの音が聞こえてくる。舞台下手に大きなコンピューターと電話(有線)の乗ったデスクと椅子。
部屋に鳴り響く電話。ハリーは受話器を外して放り投げる。
会場は狭いし、演者も直ぐそこなのだけれど、祥太の表情をちゃんと見たくて、双眼鏡を覗いてしまう時間が長くなる(これは習性だから仕方ない)。
このタイミングから額から既に、額に、首に、、汗が浮き出て凄い汗。
下手から臨んだので、横顔を堪能できました。汗が額から頬へ、鼻から顎へと伝って、ポタポタと落ちるの。何度も何度も。これが美しい。

外された受話器を元に戻させるために図書館の外からスピーカーで呼び掛けるブライアン。受話器を戻し、鳴った電話に出るハリー。
もしもし。あのな、あんたと話す気はしない。交渉はしない
がちゃんと切ってもすぐに鳴りだす電話。
世論調査?、、、ほんとにやってたんだ。
交渉とは関係ない電話。これって元々あった台詞だったかしら(初演の時の記憶薄いの)。

このあたりずっと双眼鏡で祥太を観ていたので、勝村さんがステージに現れた瞬間を見損ねました。気が付いたら上手側に勝村さんが赤いチェックの水筒を持って立ってました。次回はちゃんと観なきゃ。
警察手帳をブライアンがハリーに見せるところで、床を滑らせてハリーに渡すのだけれど、勢いをつけ過ぎてステージ下に落ちたのね(これはそれとも演出かな)。それを拾いにステージから客席前に降りてました、あのあたりでそれを目撃してる人、どんな気持ちなんだろう?(今回青山では一番前でもF列なので、あたしにはその感じはきっと判らない)

マジで?
何の対応だったか覚えてないけど、ハリーが口にしたこれちょっと印象的だった(とても普通の口調だったので)。
交渉はしない。映画で観たから知ってるんだ
この映画はブライアンも観たって言ってた。初演の時期からして『交渉人』(原題: The Negotiator)かな?
そう、ハリーがずっと手にしてるダイナマイトのリモコン(スイッチ)をかちかち、かちかち落ち着かずに動かしてるんだよね。あの音は耳触りでいらいらするのだけれど、観客をその気持ちにさせるつもりでやってるんだよね。ハリーが尋常でなく興奮して落ち着いてないのが凄く伝わる。かちかち、かちかち。

君は悪ふざけするタイプに見えない、インテリに見える
ブライアンのハリーの印象。
結婚してない男はみんなゲイじゃないといけないのか?
ハリーが発した言葉。後でメリンダとの会話とかブライアンとのやり取りで感じたのはハリーは童貞なのかもな、、、。メリンダが初めての彼女で、結婚する前には手を出してない(やってない)っぽい気がする。なんとなく。

奥さん(かみさん)が朝煎れたコーヒーをハリーに勧めるブライアン。頑なだったハリーが、
コーヒー貰おうかな?
って口にしたのは、何がきっかけだったっけ。薬が入ってるのではという疑いを晴らすために、ブライアンコーヒー飲んでたっけ?このあたりの記憶がない。これも次回ちゃんと観る。
カップに入れたコーヒーの薫りを嗅ぐ表情がとても幼くてかわいらしい。ここだけ表情が和らいでたよね。軽く笑っていたように見えた。
そしてカップには本当に何かが注がれていて、実際それを飲みほしてました。あれはコーヒーではなくて水かな?(是非とも、水分補給はして欲しい。すっごく汗かいてたし)

コーヒーを飲んでからのハリーの台詞はパンフに載っていたのでそこから抜粋。
どんなものでも、コピーできるとなったら、オリジナル価値はなくなっちゃう。それはもう……ユニークだとはいえなくなるから。けど「ユニーク」って言葉自体、今じゃ価値が無くなっている。だって、「なになにって結構ユニークよね」って話を毎日のように聞くじゃないか。何だ、その、「結構ユニーク」ってのは?!ユニークはユニークだ。絶対的にユニークなんだ!

だから俺は、社交的な一匹狼なんだ
これ頭に残ったなぁ。社交的な一匹狼。うん、判る、その感じは判る、あたしはハリーみたいに頑なではないし、生涯孤独の身でもないけれど、なんとなく判る。一人称が「僕」と「俺」が混在するんだよね。気持ちが高ぶると俺。冷静な時は僕。一概にそういう使い分けではないだろうけれど。

こっちきてよ。いいもん見せてやるよ
ブライアンに目録カードを使って、「ハーディー兄弟の探偵シリーズ」(ブライアンが思い出した40,50年前に図書館で借りた本)を「やってよ」と探させるハリー。その後、パソコンを使って同じ本を探させる。
ここは台本通りでああいう演出なのかな?コミカルなやりとり。勝村さんがふざけて、アドリブってる部分もあったんぢゃないかしら。

カード目録に関して怒涛の量の言葉でブライアンに説明するハリー。この時、上手から客席に降りてぐるっと話しながら歩く。そうそう、今回マイクはつけてません。肉声です。あの大きさのハコだと充分、声が届くね。
畳みかけるような言い回しだと、ちょっとつか舞台の口調が出てくる気がする。
ハリーは大体が普通のトーンなので、あまり気にならないのだけれど、声を荒げたり興奮すると、ちょっとそれが顔を出す。

家族の話や生い立ち等、いくつか言葉を交わしたあとのブライアン。
煙草を吸ってもよいかを問うと「いやだ」(←幼い)と答えるハリーに吸うのをやめて、ポケットにしまうブライアン。爆弾のスイッチを相変わらず、かちかちしているハリーに、
君もそれ、しまってくれないか。
、、、いいよ。
ここで、ハリーはずっと手にしていたリモコンスイッチを上着の左側の内ポケットに入れる。「いいよ」と応えるまでの間と、言葉のニュアンスが柔らかかった。うっかり口にした時の表情を見損ねたから、次はちゃんと観る。
、、、ハンサムに見えるための催眠術の話はこのあたりだったかな。

俺(の交渉は)は難しい?チョロい?
自分の事になると頭がよすぎるんだ。だから難しい

途中でハリーを説得するためにやってきた、メリンダ(ハリーを10年前に結婚式の1週間前に振った元カノ)。無線でハリーに語り掛ける。
あなたにふさわしい女じゃなかったから
君は僕にふさわしい女だったよ、あの論文を提出するまでは
あたしは自立した女にならなくっちゃ
メリンダとの会話を激情したままに終えて、上手側の床に座り込んで頭を抱えながら、ブツブツとひとりごちるハリー。
その時の目がね。ぶっ飛んでた。焦点があってなくて、危ない感じ。でもそんなハリーの心情が伝わってくる。

脇にやられても本は感情を害したりしない
本の方から君を脇にやることもない
実際本棚にあった本を使って、そう語るハリー。

私の使命は、君の命と、この図書館を救うことだ
図書館を救いたいならば、僕に味方しろ!
所長と話をするために外に出ようとするブライアン。
私には荷が重すぎる
その部屋を出て行く背中にすがりつくように言葉を投げるハリー。
でも外に出ていってしまうブライアン。

1人残された部屋で、ダイナマイトをコンピューターにガムテで括りつける。たった一人の肉親である姉に電話するハリー。
さよならを言いたくて電話したんだ
不倫をしていると語る姉を諌めつつ、喧嘩別れ的な切り方をしてしまう。

交渉の材料(2週間の海外旅行)を手に戻ってきたブライアン。けれどもハリーは全く納得せず交渉は決裂。
そして持ってきた武器(ピストル)をハリーに向ける。逃げずにまっすぐに銃口に向かって歩いてくるハリー。
結局そのピストルをブライアンから簡単に取り上げるハリー。駄々をこねるようにジタバタと叫びながら。
がっかりしたーー。がっかりした。めちゃくちゃがっかりした。
そして、ブライアンに妻に電話を掛けさせて、替わってもらい話すハリー。話が出来たことに礼をして受話器を置く。

ハリーの納得できる解決案が提案できず、ピストルも取り上げられたブライアンは、コーヒーを持ってきた水筒を手に、肩を落としながら外に向かうのだが、部屋を出る寸前に妙案が浮かんで振り返る。
目録カードをブライアンのガレージで保管することを提案し、握手をして、ハリーがブライアンの右肩に顔をうずめてハグをする。
投降して二人で一緒に外に出る前に「ハーディ兄弟」の本をブライアン渡し、その目録カードを棚に収めてるのね。
その後、肩をブライアンにがっつり組まれたまま、一緒に部屋を出るとみせかけて、ブライアンだけ外に出し、戻ってきてしまうハリー。
このブライアンを巻き込まない方法をどこで考えた(決めた)のかな。

部屋に掛かってきた電話で、ブライアンに「現在」の目録カードだけでは駄目なことを、新しい図書をアップロードしていかなくてはならないことを力説する。
いや。もう、ここに立てこもった時点で、ハリーは実行することを心に固く決めていたのかもしれないね。
そこに、突然の銃声。外から狙撃されて撃たれるハリー。倒れてからの息遣いが、聞いてて怖いくらいだった。手にしていた爆弾のリモコンのスイッチを入れても爆発しないダイナマイト。
ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう、、。なにが、テクノロジーだ
リモコンを放り投げると大きな爆発音。あああ。
初演や再演の際はここで、上から白い紙が降ってきたのだけれど、今回は赤い炎の照明での演出。撃たれたハリーは目をかっと見開いたまま息絶えてたのも印象的。

そしてまた「Ave Maria」。会場中がこの曲に包まれるのが心地良い。
&3回のカーテンコール。ここではもうハリーとブライアンではなくて、祥太と勝村さんに戻ってて、笑顔。うん。笑顔。やりきった顔してる。

実は今回、まったく涙は出ませんでした。思ってたよりもダメージも薄ったのは、演目の内容を知っていたからかもしれない。
でも、舞台の上の祥太はハリーで、勝村さんはブライアンでした。
体力は消耗したけれど、見終えた後は身体中高揚してました。
祥太、美しかった。儚いのとは違ってちゃんと躍動してるんだけど、その息遣いとかずっと流れる汗とか、ああ、もうずっと観ていられる。横顔や顎から滴る汗の行方も、美しかった。おもしろかったな、本当、次観るのが楽しみで仕方ない。同じ回を観劇されていた成松さんの言葉を借りるとしたら、1時間40分、がっつりと魅せていただきました。うん。
※関係者数名観劇。薮くんと圭人、劇場出た所でお見掛けしました。

【スタッフ】
作:LEE KALCHEIM
翻訳:小田島恒志
演出:鈴木勝秀
美術:原田 愛
照明:原田 保
音響:井上正弘
衣裳:関けいこ
ヘアメイク:奥山信次
演出助手:元吉庸泰
舞台監督:榎 太郎
舞台製作:クリエイティブ・アート・スィンク 加賀谷吉之輔
宣伝美術:永瀬祐一
宣伝写真:西村 淳
題字:中島 瞻風
版権コーディネーター:マーチン・R・P・ネイラー
宣伝:吉田プロモーション
票券:インタースペース
制作協力:ミーアンドハーコーポレーション
制作:伊藤夏恵、竹葉有紀
プロデューサー:江口剛史
企画・製作:シーエイティプロデュース

パンフレット:1,500円
オリジナルブックカバー(赤・黒):各1,000円
オリジナルピンバッチ:500円

音楽:大嶋吾郎